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ヴィッカーズ社バロー・イン・ファーネス造船所に展示されている巡洋戦艦“金剛”の模型

 

戦前のわが国における艦船模型メーカーの代表的存在といえば、誰しも籾山(もみやま)艦船模型製作所の名を思い浮かべるに違いない。三河(愛知県)出身の籾山作次郎が大正の初めに設立したこの模型製住所は、以後太平洋戦争の終結にいたるまで、多数の艦船模型を製作した。大型模型のほかに、艦艇識別訓練用に日本、アメリカの艦艇の小型模型も沢山作っており、その一部は今も現存している。
籾山作次郎は父が海軍に勤務していた関係もあって、幼時から大の軍艦好きとなり、軍艦の絵葉書や写真を集め、また毎日のように九段の遊就館に出向いて展示されている模型を眺めて暮したが、そのうち自分でも模型を作るようになった。模型製作を職業とするようになったのは、自作の戦艦“薩摩”の模型が注目を集め、明治42年に東郷元帥の書を添えて天皇に献上されたのがきっかけである。
職人芸に徹した籾山の模型はその出来栄えを高く評価され、戦後も籾山船舶模型製作所と名を改めて、長く斯界に君臨したが、惜しいことに子息蔵太郎氏の代になってからしばらくして休業してしまった。いずれにせよ、わが国の艦船模型を語る場合、籾山の名を逸することはできない。その優れた商船模型の方は今なお随所で目にすることができるしのである。

 

イギリスのロンドンに国立海事博物館と帝国戦争博物館があり、いずれもその展示内容のレベルの高さで有名であるが、模型にもすばらしいものがある。しかし同じロンドンのもう一つの圧巻は科学博物館に舷々相摩瞭する

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ウィーン軍事史博物館の戦艦“フィリブス・ウニティス”の縦断面模型

 

 

 

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